「No.5 お仕事中につき」を読んでからの方が良いかも。
No.6 使令と一緒 回廊の先にひとだかりが出来ていた。その中心には景麒が見える。それどころか、彼の使令の班渠や驃騎までもがいる。 しかし、雰囲気は和やかだ。いや、楽しそうと言うべきだろうか。 陽子が近付いていくと、景麒の顔がぱあっとほころんだ。獣形ならば、間違いなく尻尾が振れていただろう。 「主上！」 「これは一体、な……」 景麒の呼びかけに現状を問いかけたが、途中でぴたりと止まってしまった。視線は景麒の手元に。 景麒は署名を集める人のように画板のようなものを首にかけていた。そこに小さな垂れ幕のようなものがあり、文字が並んでいる。そして、その景麒の行為は署名とそう遠いものではなかった。 なぜなら、陽子が読み取った文字というのが……。 「主上ふぁん倶楽部受付って……？」 もちろん、文字通りの意味だ。それ以外のなにものでもないのだが、陽子の脳みそは否定した。とても、否定したかった。だが、景麒が容赦なく、かつ幸せそうに答えてしまった。 「何をおっしゃいますか。主上のふぁん倶楽部の募集をしているのですよ。今までは口伝えだけの小さな募集だったのですが、次々と詳細を聞かれますので、ここでひとつ大きく募集を行おうと思った次第なのです」 聞きながら、陽子の意識はものすごく遠くなった。 確かに、以前に景麒がふぁん倶楽部の会長だなどと言っていた。だが、それは景麒と酔狂なもの達の小さな小さなものだと思っていた。なのに、なのにっっ！ 「何故、こんなに大勢のものが集まっているんだ！」 思わず景麒の胸ぐらをつかみあげて叫ぶが、 「主上が素晴らしい王でおありだからですよ」 当の景麒は嬉しそうだ。しかも、周りのもの達もうんうんと頷いている。 混乱する陽子だったが、目の端に強力な助っ人を捉えた。が、そう思ったのは陽子だけだった。 「浩瀚！ これを何とかしてくれ」 王の訴えに、浩瀚はにっこりと笑った。もちろん、願いを聞き入れてのではない。 「それも中々役に立ちますので」 怜悧な冢宰はそれだけ言い、一礼してその場を去っていた。 ただ、陽子だけがその場に取り残される。周りには大勢の人間がいるというのに、気分は独りぼっちだった……。 |
ふっか〜つ！（私が）と思ったら、やっぱり景麒がおかしい。（笑）