No.8 主従の日常 「主上はもう少し、王としての自覚を持って頂かねば困ります！」 眉間にしわを寄せ、鼻息も荒く景麒はくどくどと説教を始めた。 その様子を間近にしながら、陽子はうんざりとした顔になる。 （まぁた、始まった…） ため息をつきつつも、とりあえず言いたいだけ言わせてやる。 だが、その実、全く聞いていない。 適当に相づちを打つ陽子に、景麒はさらに声を厳しくした。 「主上！ 聞いてらしゃるんですか！」 まともに聞いてはいなくても、聞こえてはいるのだ。 耳に痛い言葉に、さすがに嫌になってきた。 「わかった、わかったから。もう、下がれ」 ひらひらと手を振って退室を命じる。 景麒は全くもって言い足りなかったが、逆らえるはずも無く、渋々と退室していった。 それと入れ違いに祥瓊が入ってくる。 「何？ また怒られたの？」 景麒の出て行った時の様子と、今の陽子の様子から簡単に想像がついた。 「まぁ、な」 苦笑する陽子に、祥瓊は眉間にしわを寄せた。 「そりゃあ、確かに言いたい事は山とあるでしょうけど、台輔ももう少し陽子に対して優しくしてもいいと思わない？ 毎日毎日よく続くわ」 微妙に痛いところを突きつつ、祥瓊は憤然と言い放った。 さらにくどくどと続く文句を陽子は苦笑しながら聞いていた。 ふと、その後ろから視線を感じた。 目をやれば、扉から半分顔をのぞかせて景麒が見つめていた。眉がハの字形の上、少し涙目になっている。 それだけで何を考えているかわかってしまった。 『私だって、主上のためを思って…』 （まったく、素直じゃないな。私の麒麟は…） 陽子は思わずクスリと笑った。 |
いじける景麒とそれをちゃんと解っている陽子です。
何ていうか…うちの景麒さんは情けないですな。好きですけど。