| 2000hitキリリク 『非日常な日常』 六太は広い玄英宮内を主を探して歩いていた。だが、全く見当たらない上、王気の残滓もない。 半ば―というより殆どここにはいないと分かっているのだが、何となく諦めがつかずぷらぷらと歩いていた。 その前を帷湍と朱衡が通りがかる。 「あ。帷湍、朱衡。なぁ、尚隆が何処に行ったか知らない？」 「あの馬鹿ならどっかに出て行ったぞ！」 六太の問いに、帷湍は憤懣もあらわに鼻息荒く答えた。冗談抜きで頭から湯気が出そうだ。 その傍らで、朱衡は苦笑をもらしつつ帷湍の台輔に対する礼を失した態度をたしなめるが、自身もそれとたいして変わらぬ暴言を吐く。 ……いや、柔和な顔をしている分、余計にそこに含まれるものを強く感じた。 「帷湍。……まぁ、今の所居て頂きましても、たいして役に立つ事もございませんので宜しいですが」 「そ、そうか」 笑顔でありながら、裏を嫌というほど含む言葉に六太は乾いた笑いしか出ない。 だが、続く言葉に気分が急降下した。 「台輔は主上に御用がおありなのですか？」 別に何といった問いでもないのだが、何故か感情が揺さぶられた。知らないうちに眉根が寄っている。 自分の感情にとまどいつつ、 「……別に」 ぽつりと言って、六太はその場を離れた。 その寂しそうな背を見やり、残された二人はちらりと顔を見合わせた。 六太は部屋へと戻ると、窓の桟に寄りかかって外を眺めやる。だが、一向に気分は晴れない。 そのままでしばらく逡巡し、場所を移動するためにゆっくりと立ち上がった。 目的地の部屋に着くと、牀榻にぽてりと横になる。いつもの事なのに、置いていかれるとたまに無性に寂しくなる。 幼い頃の記憶からなのか、それとも相手のせいなのか自分でもわからない。 「尚隆のば〜か」 ぽつりと呟き、柔らかい布に顔をうずめる。そこからは主の匂いがした。 「……王くさい」 思わず悪態をつくが、それだけで安心している自分に気付く。 六太はそこで眠る事もなく、ただぼんやりと過ごす。 しばらくそのままでいると、あたたかい気配が近づいてくるのを感じた。 それをすぐ側に感じた途端、声が降ってくる。 「こんな所にいたのか。部屋に行ってもおらんから探したぞ。……寝てるのか？」 反応のない六太に尚隆が答えを期待せず問うと、しばらくしてから返事が返ってくる。 「……寝てない」 微かにふて腐れた声に尚隆はくすりと笑った。 六太はその態度に眉間のしわをさらに深めると、むくりと起き上がった。 その様子を楽しそうに眺め、 「ほれ、みやげだ」 尚隆は六太の手にぽとりと小さな袋を落として隣に座る。 「何？」 「あめ玉だ」 簡潔な問いに答えを返すが、六太はただ袋を見つめていた。 「…いらんのか？」 「ううん、もらう。ありがと」 あまり嬉しそうでない様子に声をかければ、六太はふるふると小さく頭を振り、そのまま黙ってあめを口に運ぶ。 しばらくもごもごと口を動かすが、すぐにぴたりと止まった。 そして、あさっての方向を向くと再度口を動かす。 「……みやげもいいけどさ、今度は俺も連れて行けよ」 言い終わった六太の顔は微かに赤かった。 尚隆は驚きと共に笑顔をこぼすと、 「わかったよ」 六太の頭をくしゃりとなでた。 |
キリバンを取って頂いてから、さ…3ヵ月も経っております。ヒー！
申し訳ありませんっ！ やっとこさ、生み出しました。
密かに、初雁国話です。書いてて楽しかったです。
六太が寂しん坊で尚隆がお父ちゃんとか言わないように。(笑)
リク内容とあってないとかいわないように。(汗)
とにかく、椎名雪姫様。2000hitありがとうございました！