正しい二人の使い方 「ん…むぅ…」 提出された書類に目を通しながら思わず火影はうなってしまった。 手にしているのは依頼書。 すでに任務を遂行する者の名前も二人分記載されている。 しかし、その名前に火影の表情は曇る。 確かに、能力的に見れば申し分のない人選ではある。 多少の時間はかかろうとも、現状を動かすためには適している。 だが…。 火影は目の前に立つ、この問題の書類を提出した張本人を見やる。 その優れた頭脳と記憶力を買われ、それぞれの忍者に適した任務を振り分ける仕事に付いた桃色の髪をした女性。 二人を良く知る彼女にとっては当然なのかもしれない。 だが…。 「サクラよ…。本当にこれで良いのか…？」 火影は不安いっぱいで確認を取るが、返ってくる返事はとても明るい。 「ええ、もちろんです」 「あの二人で…長期じゃぞ？」 誰もが知っている長期任務後に出る二人の症状を火影は心配していた。 最近は任務後だけでなく、あまりにも任務が長引くとその最中にも発症するようになっていた。 確かに任務には支障をきたしていない。それどころか、そのおかげで早く任務は終了する。 しかし、周りにとってはとてつもなく迷惑となっていた。 それが二人ぶん…。 考えるだけでも嫌である。 それを充分過ぎるほど判っているはずのサクラはにっこりと笑顔で答える。 「はい。それこそが正しい二人の使い方ですから」 「そうか…」 そこまで断言されては仕方がない。 火影はあきらめの境地で認可の判を押す。 もう一度、二人の名前を眺めてため息をついた。 二人の名前は次の通り。 はたけカカシ。 うちはサスケ。 里でもトップクラスの忍者。 しかし、性格に難あり、と但し書きがつく。 任務内容は簡単にいうと国の裏切り者の殲滅。 だが、敵は狡猾な上に数多くの忍者を使っていて長引くことは予想されていた。 現に、数は減っていっているもののすでに三ヶ月が過ぎていた。 予定よりはまだまだ早いのだが、そろそろ危険な予感が…。 敵が潜む館の近くで二人は野宿をしていた。 だが、あまり緊張感がない。 「ねぇ、サスケ〜」 「……」 カカシはつまらなさそうにかたわらのサスケを呼ぶと、サスケは振り向きもせずにちらりと一瞥だけをくれる。 だが、カカシも気にした様子はなく勝手に話を続ける。 「イルカに変化してくれな〜い？」 カカシの言葉にぴくりと眉が上がった。 「ふざけるな」 「だって、恋しいんだもん〜」 取り付くしまもないサスケにカカシは嘆くが、いい案が浮かんだらしく、ぽんっと手を打つ。 「じゃあ、俺がナルトに変化…」 「したら殺すぞ」 サスケはカカシの提案を最後まで言わせずに切り捨てた。 完璧に変化出来るだろうが、所詮中身はカカシだ。冗談ではない。 「え〜、何で〜？」 「ナルトが穢れる」 「失礼だな〜」 「やかましい」 カカシの抗議にまたしてもサスケは一言で切り捨てる。 が、そこへクナイの雨が降った。 二人は難なくかわすが、すでに周りは無数の忍者に囲まれていた。 だがそんな状況にもかかわらず、サスケは思わず口元に笑みを浮かべる。 「そっちから動いたか…」 「そうだね〜」 カカシも同様だ。 しかし、相手はそれが気に入らなかったようだ。 「何をニヤついてやがる。死ねるのがそんなに嬉しいのか？ だったら…」 スッと獲物を構えると、 「…死ね」 言葉を発すると共にいっせいに襲い掛かる。 だが、二人はあわてず騒がず。 ただ静かに切れていた。 「お前らがな…」 同時につぶやくと、あとは手足を動かすだけ。 クナイを動かすたびに血飛沫があがり、瞬く間に死体が出来上がっていく。 ナルト・イルカ欠乏症が発症しつつある二人は普段以上の能力を発揮していた。 そのため、そこにいた敵全員が動かなくなるまでにそう時間はかからなかった。 しかし、二人は止まらない。 「このまま一気に片付けるぞ」 サスケの目線は残りの者どもが潜む館。 カカシにとっても断るいわれはない。 「はいはい」 軽い調子で返答を返す。 …二人とも既に冷静な判断力は失われつつあった。 ただ、早く終わらせて帰りたいだけ。 その勢いのまま館へと侵入すると、一気に片をつける。 心なしか…いや、はっきりと口元に笑みを浮かべて二人は嬉しそうだった。 任務が終わるからというより、もうすぐ愛しい人に会えるという嬉しさから。 その姿は相対する者たちにとって恐ろしい以外の何者でもなかった。 まさしく悪魔の微笑み。 間もなく、館内にあるのは二人の気配だけになった。 周りの惨劇とは裏腹に、サスケとカカシは晴れ晴れとしていた。 「じゃあ、帰るか〜」 嬉々としてそう宣言するカカシにサスケも無言で賛成する。 こうして、予定より早く任務は遂行され二人は帰還した。 数日後。 受付に提出された報告書を見ながらサクラは満足そうにつぶやいた。 「ほうら、やっぱり。適材適所よね！」 賛成するものは少ない…。 |
アンケートにお答え頂いた方に差し上げたお礼小説です。
とにかく、サスケとカカシのやりとりが書きたくて作ったものです。
まぁ、いつもの事と言えばいつもの事なんですが…展開がいきなり…。(^_^;;
無駄に長々と書きたくないからなのですが、省きすぎ…？精進します。
とにかく、アンケートにご協力頂きありがとうございました！