彼の人の… 「はあ…っ」 木にもたれ､カカシは細く息をもらした。 体中は冷えていくのに、傷を負った腹部だけが熱い。 そこを押さえるてのひらには脈打つ様が伝わり､それに呼応して赤い血が流れ出ていく。 （あーあ。約束したのにねぇ） カカシは出かける前に見た寂しそうな顔を思い出す。 『本当はこんな事を言ってはいけないとわかってるんですけど…帰ってきてくださいね』 いつもならけして言わない事を今回に限ってそう言っていた。 何かを感じ取っていたのか、それともただの偶然か。 今となってはもう、わからない。 （でもまあ、あなたがいなくて良かった…） アカデミー勤務の彼にこんな任務が下るとは思えないが、そんな事に思い至る余裕さえもカカシにはなかった。 あいかわらず腹は熱いままで、血が止まる気配はしない。 （いやだなぁ） 空をあおぎ見れば、蒼い月が浮かんでいる。 その柔らかい光は彼の人を思いおこす。 （せめて、最後に声が聞きたかったよ…） 意識が朦朧として、もう目を開けているのも辛かった。 「イルカ…先…生…」 彼の人の名をポツリとこぼし、カカシは意識を手放した。 |
初めてのカカイルが死にかけ（あくまでも死に“かけ”）ネタって…。
イメージ曲は平井堅の「メリー･ゴ―･ラウンド･ハイウェイ」
高速道路で死にゆく（？）っつうなんか怖い曲。でも、好き。