7000hitキリリク 『逢いたい時には逢いに行こう』 木の葉学園高等部２年７組の教室。 にぎやかな昼休みの光景とは裏腹に、うずまきナルトは悩んでいた。 「最近、全然サスケと会えないんだってば！ どうしたら良いと思う？ サクラちゃん」 昼食のパンを片手にツインテールを揺らし、目の前に座る名前と同じ桜色の髪をした親友に相談を持ちかけた。 必死の形相のナルトに対し、サクラはジュースを一口すすってからしれっと答える。 「…別に良いんじゃないの？」 冷たいとも言えるその言葉にナルトは情けない声を出す。 「ひどいってば！ サクラちゃん。真剣に言ってるのに〜！」 さらに、ぎゃんぎゃんと騒ぎ立てるナルトに対し、 「あのねぇ…」 ひとこと言い置いてから、サクラはじろりと睨みつけた。 「…っ！」 その眼差しに、ナルトは一気に静かになる。 「私だってリーさんに会えないんだから我慢しなさいよ。あんたはいいじゃない、同じ学年なんだから。休み時間でも会いにいけるでしょ？ 私の場合は３年生の校舎。行ける訳ないじゃない！」 「でも、サクラちゃんは日曜日にデートしてるってば……」 「ん？ ま、まあね…」 ナルトの指摘にサクラは嬉しそうに微笑む。 それを見て、ナルトはさらに沈み込んだ。 「あたしは本当に全然会えないんだってば…。休み時間もずっと何かしてるから邪魔出来ないし、寮に帰って一緒に御飯食べようと思ってもサスケはぎりぎりに帰って来るからそれも邪魔出来ないし…。そのうち９時になっちゃうから食堂にはいられないでしょ？ そしたら女子寮に帰らなきゃいけないし…。土日も何だか忙しそうで…」 「そんなに生徒会、忙しいの？」 「ん…。予算会が近いらしくって、その調整が大変みたいだってば…」 「そう…」 寂しそうなナルトの姿にサクラは胸が痛む。 普段は同じ学年のサスケと付き合っているナルトを羨ましく思っていたが、今は己のほうが恵まれている。 「サスケに会いたいってば…」 ポツリとこぼした言葉に、サクラも思わずポロリと言ってしまった。 「男子寮に行けたら良いんだけどね」 冗談のつもりで言ったはずなのだが、相手が悪かった。 その言葉に反応し、ナルトの表情はみるみる輝きだす。 「その手があったってば！」 「え？ ナルト？」 「そっか〜」 晴々とした表情のナルトとは対照的に、サクラは動揺して困惑の表情になっている。 「ナルト？ わかってる？ 男子寮には女子は入れないわよ？ 食堂みたいに兼用の場所じゃないわよ？ ナルト〜？」 サクラは必死に説得を試みるが、ナルトは嬉々としながらパンを食べていて全くもって聞いちゃいねえ。 ９時以降立ち入り禁止の食堂の方は理解しているのに、なぜ全面女子立ち入り禁止の男子寮の方は理解していないのだろう？ 「ナルト〜？」 呼びかけも虚しく、昼休み終了のチャイムが鳴る。 その音にせかされながら昼食を終え、 「じゃ、サクラちゃん。あとでね！」 混乱中のサクラを置いてけぼりに、ナルトは嬉しそうに自分の席へと戻っていった。 「ナルト…」 サクラの最後の呼びかけもチャイムにかき消されてしまった…。 「サ〜クラちゃん！ 帰ろうってば！」 本日の授業をすべて終え、帰り支度を整えたナルトがサクラの席へとやってきた。 その表情は昼休みの初めとは比べ物にならないくらい明るい。 しかし、サクラは逆にその表情に不安になってくる。 本気で行くのだろうか…。 聞けば素直に肯かれそうなのが怖くて、聞くに聞けない。 とりあえず気をつけておこう…。 サクラはそう心に決め、ナルトを促す。 「じゃ、帰ろっか」 「うんっ！」 返ってくる明るい返事が、ちょっと恐ろしく思えた。 ナルトと同じ寮の部屋に帰ってきて、いつもと変わらない日常にサクラは安心した。 制服を着替えて、部屋でゴロゴロして。 夕食の時間になれば食堂へ行って御飯を食べる。 部屋に帰ってきて、少し休憩したらナルトは風呂へと向かった。 一人になった部屋で、サクラはふうと息を吐く。 「私の思い過ごしか。そうよね、いくらナルトでもそんな事をしないわよね〜」 あはははと笑うが、ちょっと乾いている。 とりあえず、学校から帰ってきてからナルトはひとこともサスケの話はしなかった。男子寮の話も出なかった。 サクラも恐ろしいので、あえて触れなかったが。 「大丈夫よね！」 多少無理矢理なところはあるが、そこにはあえて目をつぶりサクラは己を納得させた。 そうこうしているうちに、ナルトが戻ってくる。 「ふ〜。気持ちよかったってば。サクラちゃんも入ってくれば？」 「ん？ そうね…」 言いながら時計をちらりと見れば８時半過ぎ。 あと少し経てば、唯一の男子寮へと続く食堂も閉められる。 ナルトがどう男子寮へ行こうとしていたか、あるいは行こうとしているか判らないが、９時を過ぎれば女子寮から出ることも無理である。 「ま、大丈夫でしょ。ちょっと早いけど私もお風呂入ってくるわ」 「うん」 ナルトを一人残し、さっさと準備をしてサクラは部屋を出た。 しかし、この行動をサクラは深〜く後悔することになる。 部屋に戻ったサクラを待っていたのはナルトではなく、ナルトの書置きだけだった…。 『サクラちゃんへ サスケに会いに行ってくるってば。心配しないでね！ ナルト』 「…ナルトのバカっ！」 サクラはひとこと叫ぶと、書置きを握り潰した。 ちなみに、サクラが部屋を出て行ってからナルトがサスケのもとへと向かったのは確信犯ではなく偶然である…。 「ったく。いつまで忙しいんだよ」 サスケは半ば口癖になっている言葉をつぶやいた。 今日も色々と仕事を片付けていたら、ずいぶんと遅い時間になっていた。 毎日毎日、ずいぶんな量を片付けている気がするのに、終わらないのは何故なんだろうか。 「おかげでナルトにも会えやしねぇ」 ふうっとため息をひとつついて部屋のドアを空けた瞬間、サスケはぴきっと固まった。 目の前には見慣れた…それでいてこの部屋では見慣れない姿があった。 そして、聞きなれた声が。 「あ、サスケおかえり！」 その瞬間、サスケはものすごい勢いでドアを後手で閉めた。 信じられなかったが、事実がそこにある。 「何でお前がここにいるんだ！」 あまりの驚きにほとんど怒鳴り声に近い声で問えば、 「会いに来たってばｖ」 にっこりと笑顔とともに答えが返ってくる。 あまりにも事もなげに言われて、サスケは脱力した。 そして、怒りの矛先は同室のシカマルに向けられる。 「何で入れた」 サスケはキツイ眼差しを向けながら問うが、シカマルは気にした風もなく面倒くさそうに答える。 「会いに来たって言うからよー」 「女子は立ち入り禁止だろうがっ！」 思わず怒鳴り声を上げたサスケに、シカマルはふうっとため息をついた。 「めんどくせーな。そのまま、外に置いといた方が余計ヤバイだろうが」 「く…っ」 最もな意見にサスケは押し黙った。 そんなサスケにナルトはしゅんとして謝る。 「ごめん、サスケ…。でも、会いたかったんだってば…。最近、サスケずっと忙しいから…」 「ナルト…」 手段はどうあれ、会いに来てくれた事は変わらない。サスケとて同じ気持ちだったのだから…。 サスケは苦笑を一つもらし、ナルトを抱き寄せた。 「怒鳴って悪かった」 その言葉に、ナルトもぎゅっとサスケにしがみついた。 「サスケ…会えて嬉しいってば！」 「…俺もだ」 そんな幸せそうな二人に、いつのまにか忘れ去られているシカマルの声が割って入った。 「ところで…どうやってここに来たんだ？」 邪魔をするのはどうかとも思ったが、見ている方は恥ずかしい。 それにここはシカマルの部屋でもある。ちょっとくらい主張してもいいだろう。 まあ、それ以上にどうやってきたのかが気になる。今後の参考のため…というわけでもないが。 しかし、ナルトの答えはあっさりしたものだった。 「ん…？ フツーに」 「フツーに？」 思わずサスケも聞き返し、声がハモった。 「ん」 つまり、女子寮を出て兼用スペースである食堂を通り、そのままどうどうと男子寮へと来たという訳である。 「誰にも見つからなかったのか？」 「うん。誰もいなかったってばよ？」 「……」 何の疑問もなく言われて、サスケとシカマルは黙ってしまった。 偶然とは恐ろしい。もし、誰かに見つかればただではすまなかったはず。それ以上に、ここには来られまい。 思えば今までもナルトは異常に運が良かった…。 「お前、凄すぎ…」 サスケのつぶやきに、シカマルも声には出さずに賛同した。 そしてその後は…。 サスケは自分のベッドをナルトに明け渡し、シカマルのベッドへともぐりこんだ。 しかし、シングルのベッドに男二人はさすがにキツイ。 当然の事ながらシカマルが不平をもらす。 「せまい」 「我慢しろ」 背中越しに聞こえるつぶやきをサスケは一刀両断した。 しかし、納得がいかないのかシカマルはとんでもない事を言う。 「何でオレが。ナルトと寝りゃーいーじゃねーか」 「できるかっ！」 あまりの事に大きな声で怒鳴ってしまい、サスケは慌てて口を抑える。 そっとナルトの方を見やれば、すうすうと気持ちよさそうに寝ている。 「めんどくせー」 「だったら、お前は山中が来たら一緒に寝るのか？」 「寝る。お前よりずっとマシだ」 「……」 せっかく意地悪く返してやったのに、事もなげに言われてサスケは黙るしかなかった。 こちとら、そんなに自制心強かねーんだよ！ つぶやきは声にのせることもなく、サスケは己を無理矢理まどろみの中に突き落とした。 次の朝。 またしてもナルトは難なく、心配しすぎて怒り狂っているサクラの待つ女子寮へと帰っていった…。 |
え〜、めちゃくちゃ久し振りのリク小説アップです。
大まかなストーリーは出来てたんですが、完成が…。
でも、出来あがってよかったよ〜。ずっと、早くしなきゃ〜！と思ってたので。
とりあえず、気に入っていただいたようでよかったです。
梓様。7000hitありがとうございました。