ＥＮＤ
2002/06/23
3333hitキリリク


『手のひらのぬくもり』


「ナ〜ルトっ！」
　任務が終わって帰ろうとしている所にサクラが笑みを浮かべながらやってきた。
「ん？　何だってば、サクラちゃん？」
　素直…というか、単純なナルトはサクラの考えなんてわかろうはずもなく、かわいらしく小首をかしげる。
　その様子にちょっとノックアウトされていた人物がいたことはさておき、サクラは楽しそうに笑っている。
「ふふふふ〜」
「え？　何だってばよ？」
　ナルトはサッパリわからず、しきりにサクラに問い返している。
「あのね〜、来週お休みがあるじゃない？　それで、ナルトたちと私たちとでＷデートしない？」
「え？　俺たちって、俺とサスケ…？　…と…え…？　サクラちゃんは誰とだってば？」
　きょとん、としたナルトの答えにサクラはふふふと笑った。
　そして、恥ずかしさを隠すためなのか、サクラは思いっきりナルトを叩く。
「いやぁ〜だっ！　リーさんじゃない！」
　もう少しで吹っ飛びそうになったが、どうにか踏みとどまった。（その様子に、やっぱり青い顔になった人物が約一名）
　ナルトは叩かれた箇所をさすりつつ、思いがけない人物の名前に驚きの声をあげた。
「え〜！　ゲジマユ？　いつの間に！」
　思わず失言。
　耳を掠めた聞き流せなかったセリフに、ナルトの両頬をひっぱってしっかり報復する。目が怖い。
「ナ〜ル〜ト〜？　リーさんでしょ〜う？」
「ご、ごめんってば。サクラちゃん」
　その恐ろしいほどの迫力に素直に謝ると、サクラは嬉しそうに答える。
「ふふふ〜。私も最初はそんなこと思ってなかったんだけど、りーさん優しいし誠実だし。もう、しゃーんなろー！　って感じ！」
　全くもって説明にはなってないのだが、幸せそうなサクラにナルトも嬉しくなってきてしまう。
「よかったってば」
「ふふふ」
　ナルトの言葉にサクラは綺麗に笑った。
　そして、ナルトたちは二人だけでワイワイと話しだしてしまった。
　当事者がもう一人いるというのに。
「じゃあ、どこ行くってばよ？」
「あのね〜、最近出来た木の葉ランドはどうかなって」
「あ、それいい！　俺も行きたかったんだってば〜」
「やっぱり？」
　それを横目で見やりつつ、聞えないようにサスケは思わずボソリとつぶやく。
「…俺には聞かないのか？」
　行き先なんてどうでもいいのだが、何となく。
　まあ、ナルトが行きたいところならどこでも行くが。
　そんなサスケをよそに、二人の楽しそうな声が響く。
「じゃあ、それに決定〜！」
　行き先は、木の葉ランドに決まったらしい。　


　木の葉ランドは最近出来た、木の葉の国の遊園地。
かなり広いために、木の葉の国とはいってもはずれに建設されていた。だからといって、人が来ない訳ではもちろんない。
　ジェットコースターと大観覧車を売りにして、休日ともなれば木の葉の人間のみならず、他国の人間も混ざった大勢の人でにぎわう。
　経営者は「お客様はみな神様！」という徹底した商売人魂を持っており、従業員もそれに伴う研修を施されていたためナルトも安心して遊ぶ事が出来る。
　そして今日は平日。人気があるとはいえやはり平日は少ない。そのため、よりいっそう過ごしやすかった。
　集合場所の入口前に、すでに４人は集まっていた。開園少し前のちょうどいい時間。
「あ〜、わくわくするってば！」
「ホント！　早く開いて欲しいわね」
　期待を膨らますナルトとサクラをサスケとリーは微笑ましそうに見つめていた。
　正反対に見えてそれぞれ似ているところがある。
「いっぱい乗るってば！　ね〜、サクラちゃん！」
「そうね〜」
　２人で盛り上がり、自分の存在を忘れ去られそうなのを感じ取ってサスケは思わずナルトの腕を引く。
「何だってば？」
　不思議そうに返すナルトの答えに、リーがサスケと同じ思いをこぼす。
「サクラさん…ボクのこと忘れてませんか…？」
　その言葉にナルトとサクラは顔を合わせ笑い合う。
「ごめんってば！」
「ごめんなさ〜い！」
　そんな事をしている間に開園時間になる。
　門が開き、人が流れ出す。
「あ、開いたってば！」
「早く、行きましょう！」
　ナルトはサスケの腕を引っ張って、サクラはリーの手を引っ張って園内へと駆けていった。

　忍びが絶叫マシーンを怖がるはずもなく、４人はジェットコースターのはしごをする。
　自分の意志ではなく、機械の力によるスピードは新鮮で楽しかった。
　さすがにジェットコースターが売りなだけあって、いろいろな種類があり存分に堪能する。
　ほとんど制覇したところで昼の時間になり、興奮はそのままで青空の下で食事を取った。
　昼食直後、さすがにジェットコースターはまずいだろうという事で、とりあえずお化け屋敷に入る事にした。
　しかし、これが引き金になろうとは…。

「じゃあ、俺たちが先に行くってば！」
　ナルトは楽しそうにサクラたちに手をふり、サスケと共に入っていく。
　中は真っ暗だったが、目はすぐになれた。
「こ、怖くないってば…」
　そう言いつつ、ナルトはしっかりとサスケの服の裾をつかんでいる。
　びくびく周りを見渡すナルトに思わず微笑んでしまう。
「ほら、行くぞ」
「何だよ、えらそうに…」
　文句をいっていても、弱々しい声では迫力がない。
　思わず意地悪をしたくなってしまう。
「じゃあ、置いていくぞ」
「あ、ま、待てよ！　サスケ」
　その言葉にナルトは離されないようにと、さらに手に力をこめた。
　その後は、叫び声のオンパレード。
「ぎゃ〜！　出たってば〜っ！」
　出現して下さる皆さんにいちいち叫び声を上げる。さぞかし、驚かせがいがあっただろう。
　忍びなら気配を察知しろと言いたいところだが、可愛いナルトにはそんなこと言えるはずもない。
　恐怖でそれどこれではないだろうし。
　それに、後方でも知った声の叫び声がしていたから。
　ようやく出口にたどり着き、ナルトはホッと息を吐いた。
「は〜っ」
「そんなに怖かったか？」
　安心しきったナルトに、サスケはニヤリと笑った。
「う、うるさいってば！」
　自覚があるので、ナルトは恥ずかしくて真っ赤になってしまう。
　反撃も出来ずに、うつむいてボソリとつぶやく。
「サスケの馬鹿…」
「っ…！」
　そのかわいらしい姿で知らずに反撃が出来ていたのだが、ナルトは気付かなかった。
　天然は恐ろしい。
　そんな事をしているうちに、サクラたちもようやくお化け屋敷から出てくる。
「あ〜、怖かった」
　サクラの安心しきった声に顔をあげたナルトは、一点を見つめて固まってしまった。
「ナルト？」
　名前を呼ばれて、ボツリと言葉をこぼす。
「手…」
「手…？」
　反復しながら、みんながナルトの視線の先へと目を向ける。
　その先にはつながれたサクラとリーの手。
「あ、これ？　私があんまり怖がるからリーさんがつないでくれたの」
　少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうにサクラはつないだ手をそっとあげる。
　心なしか、リーも照れているようだった。
「い〜な〜」
　一言つぶやくと、ナルトはサスケの方に向き直った。
　気のせいではなく、目がキラキラしている。
「サスケ！　俺も手つなぎたいってば！」
「！？」
　サスケは迷った。
　もちろん、ナルトと手をつなぐ事は嬉しい。
　期待に満ちた目を向けられたら叶えてやりたくなってしまう。
　サスケはちらと周囲をうかがうと、首を横に振った。
　まばらではあるが、十分に人はいる。
「え〜？　何で？」
「どうしても」
「何でだってば〜！　いいだろ〜！」
「ダメだ」　
　ナルトのお願いにサスケが珍しく首を振る。それも、頑固に。
「サスケくん…？」
　サクラも困惑していた。
　人の目が気になる人でもないのに。
　そのうち、しびれを切らせてナルトが怒り出す。
「もう、いいってばよ！」
　なかなか手をつないでくれないサスケに、ナルトはすっかりすねてしまった｡
　サスケどころか、サクラたちも振り切ってズンズンと一人で歩いて行ってしまう。
「ナルト！」
　その後をサスケはあわてて、サクラは呆れて、リーはおろおろして追いかける。
　このままでは気分が悪いまま、今日が終わってしまう。
　ケンカ別れなんてしたくない。
　ふと、サスケはナルトの進行方向にあるものを見つけた。
「あれは…」
　そっとつぶやいてナルトの腕を取ると、今度はサスケがズンズンと進んでいってしまう。
「な、何だよ！　サスケ、離せってばよ！」
　いきなりの行動にナルトは声をあげるが、聞き入ってはもらえない。
　無言でどんどんと進んでいく。
「ちょ、ちょっと！　サスケくん…？」
　サクラもその行動の意味がわからず問いかけるが答えは返ってこない。
　必然的にサクラたちはその場に置いてきぼりをくらってしまった。
　呆然と見送ってしまったが、すぐにハッと気付き、サクラたちもあわててその後を追った。
　サスケはそれこそ走り出しそうな勢い。
　目的地に着いて、サクラはやっとサスケの行動の意味を知った。
　4人の目の前にそびえ立つものは、この遊園地の目玉。
　大観覧車。
「な〜る程」
　にっこりと笑うと、サスケに言い放つ。
「さっさと仲直りしてよね」
「わかってる」
　短く答えると、むっとした表情のまま黙ってしまったナルトの手を引っ張っていってしまった。
「え〜と…、何がどうなっているんでしょう？」
　サクラとは対照的に、リーは全くもって判らない。
　どうしたらいいのか、立ちつくしていた。
　サクラはそんなリーに微笑むと、
「私たちも行きましょう！」
　手をとって、乗り場へと向かった。

　サスケ、ナルトが先に乗り込むと、サクラ、リーは次の観覧車に乗り込んだ。
　サクラとリーが隣同士に座るのに対し、サスケとナルトは向かい合わせに…しかも、狭いのに端と端に座っていた。
　ナルトが嫌がったからなのだが、それを見てサクラはため息をつく。
「何やってるんだか…」
「大丈夫でしょうか…？」
　呆れているサクラに対し、リーは心配げな声だった。
「多分、大丈夫だとは思うけど…。早く仲直りして欲しいわ」
　もう一度ため息をつくサクラを見てリーはにっこりと笑った。
　その様子にサクラは不思議そうに問いかける。
「どうしたの？　リーさん。そんなにニコニコと笑っちゃって」
「いえ、サクラさんって本当に優しいんですね、と思いまして」
「え？」
　サクラは思わず顔が赤くなった。
　そして、それに追い討ちをかけるように言葉が続く。
「ボクはそんなサクラさんが好きですよ」
「！！」
　これ以上ないというくらい、サクラは真っ赤になった。
　両手を頬に当てると、ものすごく熱い。
「リーさん…」
　恥ずかしさに思わずうつむいてしまう。
　それでも、何とかがんばって声を出す。
「私も…リーさんが好きです」
　その言葉にさっきまでの余裕はどこへ行ったのか、文字通りボンッと音が出るほどの勢いでリーは真っ赤になった。
　それを見てサクラがクスリと笑うと、それにつられるようにリーも笑い出す。
「あ…暑いですね」
「ふふふ」
　温度が上がったのは二人の観覧車内だけ…。

　片や幸せ大放出だというのに、サスケたちの間には冷ややかな空気が流れていた。
「おい、ナルト」
「なんだってば」
　高いところが大好きなはずのナルトはいまだ機嫌が悪く、ぶすくれたままだった。
　頬杖をついて、視線は外。
　だが、景色どころではない。
「…悪かった」
　サスケが素直に謝っても、機嫌は直らない。
　一瞬、サスケの方を向くが、また外へと視線をそらす。
「手…つなぎたかったのに…」
　その声色は怒っているというより、沈んでいた。
「ナルト…」
「そんなに、俺と手をつなぐのが嫌なのか…？」
　続く言葉に、サスケは反射的に叫んでいた。
「そんな訳あるか！」
　思わず立ち上がってしまい、一瞬、観覧車が大きく揺らいだ。
　その振動と、ナルトの驚きに見開いた目を見て正気を取り戻す。
「悪い…。嫌じゃない。嫌じゃないんだが…ただ…」
「ただ…？」
　サスケは言い辛そうだったが、ナルトは理由が知りたい。
　続きをそっと促す。
　サスケは上目遣いにナルトを一度見ると、覚悟を決めた。
「ただ…嬉しそうなナルトを見せるのが嫌なんだ」
「え…？」
　心なしかサスケの頬が赤い。
「お前は手をつないだら嬉しがるだろう？」
「…うん」
「そんな笑顔を見るのは俺だけの権利なんだ。他の奴らなんかに見せてやるものか」
　言い終わると、サスケはぷいと顔をそらせてしまう。
　ナルトはその理由に驚き、そして笑いがこみ上げてきた。
　プッ…。
　思わず吹き出してしまう。
「サスケってば…！　あははは！　馬鹿〜！」
「笑うなっ！」
　赤い顔で怒鳴られても全然怖くない。
　笑いつつも、ナルトは嬉しかった。
　ようやく、笑いが収まるとナルトは左手を差しだした。
「じゃあ、今ならいいってば？」
「…ああ」
　サスケは立ち上がると差し出されたの手を右手でギュッと握りしめ、ナルトの隣へと移動した。
　そして肩口に寄せられたナルトの髪をそっと梳く。
「ナルト…」
「何だってば…？」
「この観覧車…頂上に昇るまでの間にキスをするとずっと一緒にいられるらしいぞ」
「え？　ホント？」
　顔を上げたナルトが答えを聞く前に頬に手を添えられ、端正な顔がゆっくりと近付いてくる。
　それにつられるかのように、ナルトの目もゆっくりと閉じる。
　重なっていた時間はどれくらいか…。


　観覧車を降りたナルトはもう、すっかり機嫌が良くなっていた。
　その様子にサクラとリーがホッとする。
「あんたもげんきんね〜」
「へへっ」
　サクラにからかわれても、ナルトは嬉しそうに微笑む。
「まあ、いいものも見せてもらったし」
「え？」
　ニヤリと笑うサクラにナルトはボッと赤くなった。
「見…見てたのかってば？　サクラちゃん」
「仕方がないでしょ？　見えたんだから〜。そりゃあ、機嫌も良くなるわよね」
　サクラの言葉にさらに赤くなってうつむくナルトは言い訳がましくボソボソとつぶやいた。
「だ、だってサスケが…この観覧車、頂上につくまでの間に…したらずっと一緒にいられるって…」
「え？　そんなの聞いたことがないわよ？」
　サクラは初耳だったらしく、真顔で驚いた。
「え？　だって…」
　ナルトとサクラがサスケのほうを振り向くとサスケはあらぬ方向を見て一言。
「…嘘も方便」
　その言葉に、リーも含めて3人が笑う。
「さすがサスケくんですね。策士です」
「サスケってば…」
　ナルトも笑いながら、こんな嘘ならもう一度騙されてもいいななんて思う。
　そして、サクラは…
「じゃあ、私たちもしないと！」
　リーの腕に自らの腕を絡ませ楽しそうに笑った。
「サ、サクラさん…！」
　案の定、リーは真っ赤になり、さらにみんなの笑いを誘った。
　そして、ナルトはこっそりサスケにお願いをする。
「また手、つないでってばよ」
「誰もいないところでな」

今回のリク小説は、はっきりいって楽しんで書かせていただきました。
だ〜って、リーサクも書く機会をいただけたんですもの！本当に幸せでした。
おかげでなのか、作中も結構ラブッぷりが爆発。(笑)幸せｖ
自分が楽しんでどうするんでしょう。(笑)
でも、香月さんも喜んでいただけたのでいいんです！
ということで、香月未来様。3333htありがとうございました！！