ＥＮＤ
2002/07/07
3476hitキリリク


『愛のからまわり』


　任務を終えて受付へと報告書を提出しに行くと、サスケはそこでナルトを見つけた。
　これは偶然ではなく、予定通りの事。
　今日は打ち合わせに呼び出されていたはずだ。
　サスケは己のものだけでなく、ナルトの予定もしっかりと把握している。
　この後の予定も実行すべく、サスケはナルトに声をかけた。

　つ、とサスケは横を歩くにナルトに視線を向ける。
　神妙な態度と比するように、心持ち緊張した表情がうかがえる。
　それはこの後に控えている任務の為。
　実際にはすぐ後ではなく明日の事なのだが、無理もない。
　それは、ナルトが今まで受けてきた任務の中で最上の部類に当たるものであったから。
　最上…。決して、質が良いという意味ではない。つまりは困難で…成功率が低いという事。
　もちろん、気後れしている訳ではないだろう。
　ナルトはそんなに弱くない。
　忍びとしての力はもちろんの事、その精神も。
　弱いどころか、火影という里の頂点を目指して日々努力するその姿は端から見ていても力強いものだった。
　しかし、それとこれとは別だ。
　誰しも初めての重責には緊張の一つもするだろう。
　サスケはそれを和らげようとナルトに声をかけた。
「ナルト。今日は俺の家に来い」
「へっ？」
　いきなりかけられた声にナルトは素っ頓狂な声をあげた。
　どうやら、サスケの存在を忘れていたらしい。
　仕方がないとは思いつつも、サスケは己の眉間にしわが寄るのを感じた。
　どんな時であろうと、一緒にいるときは己の存在を感じていて欲しい。
「だから、俺んちへ来いって言ったんだ。わかったか？　ウスラトンカチ」
　不機嫌そうに言うと、ナルトはムッと口を尖らせた。
　文句を言わないのは、多少なりとも自分が悪いと感じた為だろうか。
　ナルトはじっとサスケを睨みつけると、ポツリと言った。
「やらないってばよ…」
「は？」
　突然言われた言葉に、サスケは真意を図りかねた。
　それをどう取ったのか、さらにナルトは畳み掛けるように言葉を続けた。
「…だからっ！　俺、明日の任務大変だしっ！　それに…あとがつらいし…」
　心なしか、ナルトの顔が赤い。
　サスケは言わんとすることを察し、思わずぷっと吹き出した。
「なっ、なんだってばよ！　だいたい、いっつもサスケが悪いんだろ！　もう、やだっつってんのに…」
　さらに顔を赤くしてナルトが文句を言う。
（そんな顔で言われてもな…）
　愛おしさが募るだけだ。
「そんなんじゃねーって」
　クスリと小さな笑いをもらした。
「明日の任務に緊張しているようだからな。それをほぐしてやろうと思って」
「……緊張なんてしてないってば」
　口を尖らせながらつぶやく言葉には少々照れがのぞいている。
　図星を指されて少々決まりが悪いのだろう。
「ま、何でもいい。ほら、いくぞ」
　それだけ言うと、ナルトをおいてさっさと家へと向かって歩き出す。
「あ、待てよ〜」
　すぐさまナルトが追いかけ…
　そして、一言。
「……ありがとうってば」
　その言葉に、サスケは綺麗に笑った。


　サスケ宅にて、ナルトは本当に至れり尽せりだった。
「うわあ、すごいってばよ！」
　目の前に並ぶ豪華なご馳走にナルトは目を輝かせた。
「これ、本当に食べてもいいのか？」
「当たり前だろう？　お前の為に作ったんだ」
「やったあ！　いっただきまあす！」
　ナルトはそれこそ目をキラキラさせて手を合わせた。
　子供のように喜んで食事を進める姿に、サスケは苦笑しながらも温かく見守る。
「喰いすぎんなよ」
　もちろんそれも計算してちゃんと消化の良いように作ってあるが、忠告することも忘れない。
　すると、もごもごと口に物を詰めながらの返答がかえってくる。
「大丈夫だってば！」
　さすがは、鉄壁の胃袋を持っている者の答え。
　サスケは自分も箸を進めながらそっとナルトを眺める。
　明日からの任務ではまともな食事を取ることが出来ない事もあるだろう。
　期間が長いわけではないが、その内容が濃い。
　食事に気を使っているゆとりがなくなることも考えられる。
　それでどうこうなるナルトでもないのだが、ただ、せめてその前くらいは満足に食事させてやりたいというサスケの思いやりだった。

　食事を済ませて一息ついたところで、風呂を勧めた。
　明日に疲れを残さないように、ぬるめの温度。
　その間に蒲団の用意を済ませておく。
「ふぇ〜、気持ちよかったってば〜」
　ナルトは満足げに出てくると、サスケの隣にドサッと座った。
　その振動で、濡れた髪の滴が飛び散る。
　サスケはそれに眉をしかめ、
「ほら、ちゃんと拭け。風邪引くだろうが」
　文句を言いながらナルトが持っていたタオルでがしがしと拭く。
　乱暴のように思えるが、とても気持ちよかった。
　ナルトは思わすへへッと笑う。
「何だ？」
「サスケ。今日はすっごく優しいなって思って」
「今日は特別だ」
　短い言葉に、ナルトはふと口付けを落とした。
「なっ」
　予想外の行動に、サスケは思わず口元を押さえてあとずさった。
　その反応にナルトは満足げに笑う。
「へへっ」
「…ウスラトンカチ」
　サスケは眉をしかめると、バサリとナルトにタオルをかぶせる。
「わぷっ」
「…蒲団敷いてあるから、先に寝てろ」
　ひとこと言い置いて、自分も風呂場へと向かう。
「へ〜い」
　笑い含みの返事を聞きながら、こっそりため息をつく。
　…その気になったらどうするんだ。

　風呂から上がり、蒲団に入ったところでもぞりと隣の人影がこちらを向く。
「サスケ」
「何だ、まだ寝てなかったのか？」
「…ん。そっち行っていい？」
　一瞬考え、サスケは蒲団のはしを上げた。
「ほら」
　促すと、するりと潜り込んでくる。
「あったかいってば」
「…そうか」
　幸せそうなナルトに腕枕をしてやりつつ、サスケはちょっと困っていた。
　やばいかもしれん…。
　同じ蒲団に寝て手を出さない自信はなかった。
　しかし、ナルトが任務に支障をきたすのはもっと困る。
　何のためのに家に呼んだのかわからない。
　そんなサスケなど露知らず、ナルトは嬉しそうに微笑んだ。
「今日は…ありがとうな。俺、すっごく気が楽になったってば」
「そうか」
「明日からの任務、頑張るってば」
　言うなり、ナルトはサスケの首に腕を回しキスをした。
　そしてとどめに、唇を離すと
「サスケ、大好き」
　本当に綺麗に微笑んだ。
　ぷつ、とサスケの理性が切れた。
　限界だ！
「ナルトッ！」
　抱きしめた途端、腕の中の重みが増した。
「え…？」
　恐る恐る覗き込むと、ナルトはすうすうと心地よい寝息を立てていた。
　一瞬ののちに眠りに落ちたらしい。
　さすが期待を裏切らない…というか裏切られたというか…。
　コトに及んで起こす事なんて出来るわけもなく、ましてや抜け出す事もできない。
　…シャレにならない。
　サスケは思わぬ苦行を負ってしまった。
　辛すぎる…。
　結局、まんじりともせずサスケは朝を迎えるハメになった。

「じゃあ、行ってくるってば！」
「…ああ。頑張って来い…」
　満たされたナルトとは対照的に、サスケの気分は最悪だった。
　これは結局誰のせいなのか…。
　とりあえず、ナルトが帰ってきたら慰めてもらおう。
　サスケは深く心に誓った。

…全然リク内容と合ってませんね…。(苦笑)
任務中じゃないし、（まあ明言はされてませんでしたが…）全然遠まわしじゃないし…。
しかも、何の任務に行くんだろう？ナルト。書いた本人がわかりません。(^_^;;
もっと、全体的にギャグにするつもりだったんですが何なんでしょう？これは。
でも、私としては結構好きだったりします。（簡単だな私…）
なにはともあれ、遥間志紀様。3476hitありがとうございました。