祈り ナルトが意識不明に陥った…。 依頼人の子供をかばった為に。 外傷はさほどではないのに、意識だけが戻らない。 医者の言葉によれば 「目覚めることを拒否しているようです」 視線を落とせば、ただ眠っているだけに見える。 頬に触れれば温かいのに… 目を覚まさない。 "そこ"はそんなに居心地がいいのか？ "ここ"ではダメなのか？ ナルト… 「あ、カカシ先生にイルカ先生…それに、サクラちゃんの声が聞えるってば」 ナルトは温かい九尾の毛皮にうもれ、尻尾で遊んでいた。 ただ一人の人の声は聞えない。 …聞えないふり。 「良いのか…？ 目覚めなくとも」 そう言いながら九尾は尻尾でナルトの顔をくすぐった。 ナルトはその感触にはしゃぐが、すぐに沈んだ声になる。 「心配してくれてるのはわかるんだってば…。でも…ここは居心地がいい…」 優しい人はいないけれど、冷たい人もいないから。 そうつぶやいて尻尾を抱え込み、目を閉じる。 「……」 九尾はそれ以上は何も言わず、ただ優しく包み込んだ。 あれから幾日も過ぎた。 何の変化もなく、あいかわらずナルトは眠ったまま。 何も出来ずに、ただナルトの手を握りしめて祈るだけ。 「…早く目覚めろ…俺を見ろよ…」 帰って来いよ…。 他の誰もが必要としなくても、俺だけには必要なんだ。 「なんだってば…？ 胸が…痛い」 ナルトはキュッと胸元を握りしめた。 何かが流れ込んでくる。 せつない。 「これ…知ってるってば…」 毎日毎日続くそれはナルトの胸を苦しくさせる。 そうして、ようやく答えにたどりつく。 「ここにいちゃダメだってば…。ここは居心地はいいけど…」 ナルトはポロリと涙をこぼす。 「あいつがいないってば…大っ嫌いで、大好きなサスケが…」 「やっと気付いたか…」 九尾はナルトの涙を舐め取ると、苦笑をもらした。 そして、一言。 「行け」 その言葉でナルトは走り出した。 スーッと一筋の涙が流れ出た。 ナルトの頬に光るそれを見てサスケが手に力をこめた。 「ナルト！」 声に反応するようにゆっくりと目が開く。 視線が絡み合うと、ナルトは微笑んだ。 「サスケ…」 掠れた声は聞き取りにくかったが、確かにサスケの名を刻んだ。 その言葉に安堵する。 そして… 「いつまで寝てるんだよ、ウスラトンカチ…」 返す声は、涙混じりだった。 |
ちょっと弱いナルトを書いてみました。
現実がつらくて、九尾のところへ逃げ込むという。
九尾…大好きです。私。(笑)だから、保護者になってます。
まあ、某シリーズ(？)では悪者君になってますが。
あのふかふかの尻尾にくるまりたいわ〜。