ＥＮＤ
2002/08/10

『夏残り』 　暦の上では秋になったとはいえ、まだまだ暑い日々が続いていた。 　夕方でも早い時間ではその暑さは落ち着かない。 　任務後いつものように三人そろって帰っていたが、暑さに耐えきれずにナルトが道の真ん中で騒ぎ出す。 「暑い〜！　暑いってばよ〜！」 　相手をしても余計な体力が奪われる為、二人はしばらく放っておいたがいっこうに収まらないのでサクラがキレた。 「だ〜！　もう、ナルト！　うるさいっ！　余計に暑くなっちゃうでしょ！」 　内なるサクラ全開で、ナルトの両頬を引っ張る。 「いひゃい、いひゃい！　ひゃくりゃひゃ〜ん！」 「あ〜？　誰が悪いの〜？」 　暑さのためか、目が据わっている。 　それに恐れをなし、ナルトはぴたりと大人しくなる。 「ごめんなひゃい…」 「わかればいいのよ」 　サクラはひとつ頷いて手を離した。 　今度は大人しく歩き出し、気付けば別れ道にさしかかっていた。 「じゃあ、あたしはここで。また明日ね、サスケくん、ナルト！」 　報復で気が晴れたのか、サクラはにこにこと手を振って走っていく。 　そんなサクラをサスケは軽く手を上げて、ナルトは盛大に手を振って見送った。 「ああ」 「また明日〜」 　サクラが見えなくなった頃、ナルトが視線を感じて振り向くとサスケがじっと見つめていた。 　その視線が何故だか居心地悪く、思わず悪態をつく。 「なんだってばよ！」 　むっつりとした表情のままで問えば、ニヤリと人を喰ったような笑みを返された。 　それが何だかしゃくに障った。 　文句を言おうととっさに口を開いたが、それはサスケの言葉にさえぎられる。 「そんなに暑いなら涼しくしてやろうか？」 「…はっ？」 　意味がわからず問い返すが、返答の代わりに顔が近づいてきた。 「え？　何だって…っ」 　ナルトは言い終わる前に唇をふさがれていた。 　目の前にはサスケのドアップ。 『え？　え？』 　ぐるぐる回る思考が落ち着かないうちに、サスケの唇が離れる。 「涼しくなったか？」 　声に視線を合わせると、サスケがまたニヤリと笑った。 　ナルトはそれに反応も出来ず、ただ顔だけが熱くなっていく。 　その様子に満足したようにもう一度笑うと、 「じゃあな」 　一言だけ残してサスケはその場から消えてしまった。 　そこでようやく、ナルトは我に返る。 「サ…サスケのバカヤロー！！」 　叫んではみるが、相手はもういない。 　ナルトはぐいっと力任せに唇をぬぐった。 「余計に暑くなったってば…。サスケのバカ…」 　つぶやいて唇に触れてみれば、過ぎ去った夏の名残のように…熱かった…。

いろんなサイトさんが暑中見舞いの企画をされているのに
触発されて書いた残暑見舞い小説です。
フリー配布ですのでよかったら貰ってやって下さい。