サスケくんご乱心！？ それは本当に突然で、前触れなんてものはこれっぽっちもなく沸き起こった…。 任務がなかったために演習となり、それもこなして後は各々帰るだけという頃。 ナルトは帰りかけた所に強い視線を感じて振り向いた。 その結果…。 「ナルト！ 好きだ〜！」 いきなり告白され、それこそドシーンッ！ と音がするのではないかというような勢いで体当たりされた。 …いや、ナルトの小さな体に両腕がこれでもかっ！ というくらいに回されているのを見る限り、それは体当たりではないようだ。 つまり、抱きしめられているのである。 誰にかと言えば…。 同じスリーマンセルの仲間の黒髪の少年。 「サスケ！ 何するんだってば！？」 ナルトはその腕の中から必死になって逃れ出ようとするが、サスケの腕の力は緩むどころかますます強くなっていく。 常にない言動に告白されたショックも忘れ、ナルトは混乱する。 そして、それはナルトだけではなかった。 もう一人の仲間の桜色の髪の少女も、めったには驚かないであろう銀髪の上司もだった。 「サスケくん！？」 「サスケ！？」 いきなり沸き起こった出来事に、ただただ驚くしかない。 固まったまま何も出来ずにいる二人にナルトの声が届く。 「サクラちゃん〜、カカシ先生〜。助けてってば〜」 離れないサスケを引きずりながら二人へと近付いていくナルトはすでに半泣きだった。 「…う〜ん。これは何が起こったんだ？」 カカシは腕を組みながらサスケをみやる。 普段とかけ離れ過ぎた言動を除けば、見たところ何も変わったところがない。 それどころか、悩むカカシとは裏腹にサスケの機嫌はこれ以上もなく良さそうだった。 背後からナルトの腰に両腕を回し、楽しそうに、嬉しそうにニコニコと抱きしめている。 「何か…ニコニコ笑ってるサスケくんって怖い…」 サクラは貴重であるはずのサスケの笑顔をそう検分する。 普段の仏頂面と見比べてみればサスケのこの笑顔は十分魅力的なのだろう。 が、物事何でも行き過ぎは良くない。 そんな二人にナルトは嘆きの声を上げる。 「だから、助けてってば〜！」 「…わかったよ」 カカシはふうと一つため息をつき、サスケの肩に手を置くなり止まってしまった。 そのまま動かない。 「カカシ先生？」 不審に思ったサクラが問えば、クルリと顔だけで振り向いた。 その表情には情けないというのか面白いというのか微妙な色が浮かんでいた。 「？」 不思議そうなサクラに一言。 「コイツ…熱がある…」 「え！？」 思わずバッとサスケを見やるが、顔が赤いわけではなくその様子は見られない。 しかし、その腕に触ってみれば…。 「熱い！」 異常なほどの熱さだった。 これだけ熱ければナルトも熱いだろうに何故気付かないのだろう。 まあ、混乱しすぎてわからなかったのだろう。（それにしては非常識な熱さだが） つまり、サスケの言動がおかしかったのは熱のせいだった訳である。 「サスケくん、早くお家に帰らな…あっ！」 言葉が驚きのために途中で切れる。 サスケがゆらっと揺れたかと思うと、ナルトを抱きしめる腕はそのままに後ろ向きに倒れたのだった。 本来反応すべき上忍は、驚きの連続に役に立たなかった…。 鳥のさえずりと太陽の日差しにサスケは目を覚ました。 いつの間に蒲団に入っていたのだろうか。 いや、どうやって家に帰ってきたのさえ覚えていない。 ぼうっとする頭に腕から感じるぬくもりが心地よい。 （ん…？ 温もり…？） サスケは一気に目が覚めた。 バッと目を見開けば、目の前の柔らかそうな金髪が飛び込んでくる。 「…っ！！」 驚きに硬直すれば、金髪はごそごそと身をよじって振り返った。 明らかにその顔は不機嫌だった。 「よう、起きたってば？」 「ナルト！？ 何で…っ！？」 返事する事も忘れ、逆に質問を繰り出す。 そんなサスケにナルトの機嫌はさらに悪くなった。 「…何でだ〜？ お前が俺の事を離さなかったんだってばよ！！」 「！！？」 思わず驚いてしまったが、確かに、微かではあるが記憶にある。 それどころか、今も抱きしめたままだ。 それに気付いて、サスケはすぐさま手を離す。 「…ったく。おかげで昨日はあんまり寝れなかったってば！」 「…悪い」 それは全面的にサスケが悪い。 素直に謝ると、少しナルトの機嫌も軟化する。 「もう、良いってばよ」 ふうっと一つため息をつくと、サスケの額に手を乗せる。 「熱はもう下がったみたいだってば。まったく、はた迷惑だってばよ〜。いきなり人のことを好きだ何ていうし…。…えっ！？」 言いながらナルトはその言葉の意味をやっと理解した。 昨日はサスケのおかしな行動ですぐさま頭から削除されてしまったが、どういうつもりだったのだろうか。 額に乗せた手はそのままに、ナルトの顔は瞬時にボッと紅くなった。 困った事に嫌じゃない。しかし、それは本当にサスケの本心だったのだろうか。 恐る恐るサスケのほうを見やれば、顔に手をやり、ナルトと同じように真っ赤になっていた。 ちゃんと覚えているらしい。 「サスケ…」 名を呼ぶと、顔をうつむけてしまう。 その行動に微かに傷つき、ナルトも顔をうつむけてサスケの額から手を外そうとした。 が、その手をつかまれる。 「ナルト」 顔を上げれば真剣な眼差しにぶつかる。 「嘘や冗談じゃないからな」 「え…？」 揺らぐナルトにもう一度言う。 「俺はナルトのことが好きだ」 「サスケ…」 そしてナルトも小さな声で。 「…俺も、サスケのことが好きだってば」 気づいたのは本当に今さっきだけど、ずっと好きだったのは本当だから。 ナルトの言葉に、サスケはそれはそれは綺麗に微笑んで愛しい人を抱きしめた。 瓢箪から駒とはまさにこの事…？ |
普通のサスナルでちょっとギャグ風味〜。
もっとただのアホで終わらそうかと思ったんですが、
それだとナルトがただのいい迷惑なので円満にしてみました。
酒の力ならぬ、熱の力で告白。