月の雫 夜が更けて人の気配のない道を長身の男がゆったりと歩んでいた。 空には煌々と月が輝き、その光を受けて影が薄っすらと伸びている。 しばらくの間歩き、ひっそりと、だが確かな存在感を放つ慰霊碑の前まで来ると、男はぴたりと止まった。 そこに刻まれた名を沈黙と共に見つめ、 「……また、来ちまったよ」 ゲンマは自嘲気味に呟いた。 「月命日だけ、って決めてたのにな…。いったい何回目なんだか」 片膝を立ててあぐらをかくと、苦笑をもらす。 初っ端から決め事は守れなかった。 夜になって月が覗くたびに、誘われるようにここへ通った。 「もう、お前が逝ってから随分経ってるんだけどな……」 新月と満月を何度も繰り返した。 だが、思いはますます強くなるばかりで、少しも薄まらない。 そして、毎回思う。 「なぁ、ハヤテ。お前に会いたいよ……」 ぽつ、と雫がこぼれた。 |
ゲンハヤ第2弾。誰もがやっているであろう、RUIの『月のしずく』ネタ。
だって！ 書きたかったんですもの！（その割りに遅いとか言わない様に）
ちなみに、『朧』もあったりするのでした。(苦笑)