017：√ シャーペンを走らせ、並ぶ数式の答えを書いていく。 淀みなく進む手がふと、止まった。 「平方根か……」 ポツリとつぶやき、導き出された答えを見つめる。 己も二乗してみればイコールになれるのだろうか。 答えの出ない問題にため息を一つつく。そして、もう一度シャーペンを走らせた。 二人だけになった部屋で、ふと思い浮かんでしまった考えを口にしてみた。 「ねぇ、私が二乗になったらあなたに近づけるかしら？」 「はぁ？」 唐突な質問に、見入っていたパソコンから顔を上てこちらを見る。視線は疑問というより呆れの色が濃い。 だが、それにかまわず言葉を返す。 「だから、√の問題よ。平・方・根。くやしいけど、私はあなたにはかなわないもの。だけど、私が二乗になったらあなたと対等になれるかな、なんて」 にっこり笑うのに対し、呆れかえったため息が返ってきた。そして、そのままパソコンに目を落とす。 「ちょっと！」 思わず抗議の声を上げるが、続きは中断された。 「あほか。お前は一人で十分だ。だいたいお前の二乗ってどれだけなんだよ」 これっぽっちも優しさなどにじませていない口調で言ったっきり、そのまま黙ってしまった。部屋にはキーボードを叩く音だけが響いている。 でも、それで十分だった。 「そっか」 一言つぶやき、クスリと笑顔をこぼした。 |
主語をいれずに書くというのに挑戦してみました。
ちゃんとわかりますか？(汗)ちと心配です。
実はヒルまもなんていうのは内緒の話。(言ってる。/笑)