Under the Smile 笑顔の下には何が隠されているのだろう…。 彼は笑っていた。 いつでも。 クラスの中で。 友達の中で。 いつからか､そんな彼が気になるようになった。 そして、見つめるようになった。 彼は､笑いながらも何かを訴えているかのように見えた。 “俺を見てくれ” 視線の先はいつも笑顔。 でも、精巧な作り物のよう…。 どこか違う。 だけど、彼については笑顔しか知らない…。 思いがけない事はふとした事に起こる。 そう、思う。 朝､何気なく目覚めていつもより早く家を出てみた。 別に何かあったわけじゃなくて、 ちょっと思い立っただけ。 一番乗りと思っていた教室には先客がいた。 本当に思いがけない人。 彼だった。 今までにみた事のない表情（かお）、 切ない表情で机の上に座っていた。 足で椅子をカタカタ鳴らして。 胸がドキドキした。 初めて見る表情…。 もっと、もっと違う表情がみたい。 緊張して手をかけたドアが小さく鳴った。 彼が驚いて振り返る。 ｢あ…｣ つぶやいてポッと紅くなった。 え…？ そこでようやく気付いた その席…。 彼は照れ隠しか､頭をポリポリ掻くといつもの笑顔を作った。 「ごめん。ここ、どくね」 「まって」 席を離れようとした彼になぜか駆け寄った。 「え？」 腕までしっかり捕まえる。 「な…何…？」 「私…」 顔が紅くなっていくのがわかった。それでも、声ははっきりと響いた。 「私、あなたの事が好き…」 自分でもどうして言ってしまったのかわからない。でも、嘘じゃなかった。 「本…当…？」 驚きの表情で言う彼。 その言葉にコクリとうなづいた。 彼がそっと腕を離す。そして、そのまま深く息を吸った。 「俺…俺も君の事が好きだ」 そして彼は仮面を投げ捨て、満面の笑みを浮かべた。 あぁ…私が一番見たかったもの……。 笑顔の下には、本当の笑顔がつまっていた…。 |