ナルト大暴走・1 「ただいま〜」 丁度アカデミーから返ってきたばかりで玄関で靴を脱ぎかけていたあさひは、背後からかかった聞きなれない声に振り向いた。 視線の先には自分と同じくらいの歳のかわいい少女。妹のあかねに似た風貌をしているが、見覚えはない。 遠い親類のものだろうかと思いながらも、あさひは困惑した様子で問うた。 「あの…、どちら様でしょうか…？」 あさひの問いに、少女はハッとした様子を見せ、次いでクスリと笑った。 「そっか、わかんないよな。悪いんだけど、サスケ呼んでくれってばよ」 当人ではないはずなのに、あさひにとって馴染みのある口調に驚くが、にっこりと微笑まれてそんな事はどうでもよくなってしまう。半ばポッとなりながらサスケを呼ぶ。 「父さ〜ん。何か可愛い女の子が父さんに会いたがっているよ〜？」 無意識に“可愛い”を付けたあさひに少女はまたクスリと笑った。 しばらくして奥からサスケが出てくる。 何かを感じているんだろう。困惑気味に眉根を寄せていた。 「何だ…？ ……っ！？」 サスケは少女を捉えたかと思うと、瞬時に目を見開いた。その反応に少女は楽しそうに手を上げる。 「よっ！ サスケ！」 「ナルト！ どうしたんだ、その姿は！」 続く言葉にあさひは少女を振り返った。ただでさえ珍しいサスケの反応を見たというのに、さらに信じられない事を聞いてしまった。 「うぇえぇっ！？ 母さんっ！？」 二人の視線を受け、少女―いや、ナルトは照れ笑いを浮かべる。 「えへへへ〜。任務でミスっちゃったってばよ」 あまりにもあっけらかんとした様子に二人はあきれ返ってしまう。 サスケはため息を一つつくと、 「説明は後で聞く。とりあえず、家の中に入れ」 あごをしゃくってナルトを促した。 居間に入ってそれぞれくつろぐと、ナルトが口を開く。 「どうも、クナイに塗ってあった薬のせいで子どもになったみたいってばよ。でも、効果はそれだけで、数日で元に戻るらしいってば」 「油断するからだ」 ナルトの説明にサスケは腕を組みながら間髪入れずに言う。容赦ない物言いに、ナルトは頬を膨らませた。 「わかってるってばよ〜」 唇を尖らせて文句を言う姿はどこから見ても十二の少女にしか見えない。サスケはスリーマンセルをしていた頃を思い出し、懐かしさを感じた。 だが、それも一瞬のうちで、すぐに己の息子へと視線を向けた。先程からずっとナルトを見つめている。 ナルトもそれに気付いたのだろう。かわいらしく首をかしげて問う。 「あさひ？ どうしたってばよ？」 「いや…。母さんって、やっぱり昔からかわいかったんだな〜って思って」 さすがサスケの子というべきか、あさひは手放しでナルトを褒める。 その言葉に照れて、ナルトはあさひの肩口をバシッと叩いた。 「何言ってるんだってばよ！ 恥ずかしいってば！」 だが、喜ぶナルトとは裏腹に一気に気分が下降した人物が一名。 サスケはこめかみに青筋を浮かべ、低い声で己の息子を呼ぶとぴしゃりと言い放った。 「あさひ…これ以上ナルトを見るな」 「へ？ 何で？」 理不尽な物言いに問いを返せば、またもやぴしゃりと言い放たれる。 「ナルトが減る」 「………」 サスケのナルトに対する言動は色々見てきたはずだが、思わず絶句してしまった。その間にサスケはナルトを抱き上げて連れて行ってしまう。 残されたあさひは呆然と呟いた。 「父さんの、母さんバカっぷりに際限はないのか……」 何をやっていたのだろうか。 随分と時間が経ってからサスケが居間に戻ってきた。しかも、寝室の方へ行ったはずなのに、逆方向である玄関の方からやってきた。 スッと静かに戸を閉めると、寛ぎきっているあさひを真剣な面持ちで呼ぶ。 「あさひ」 表情どおりの声で呼ばれて、思わず背筋が伸びた。あまつさえ正座までしてしまう。 「何？ 父さん」 常でない様子に緊張が走る。 サスケはあさひの目の前に座ると、がしりと息子の両肩をつかむ。 「俺が留守の間、ナルトを頼むぞ」 「…うん。……？」 勢いに押されて反射的に頷いてしまったが、意味が分からなかった。 確かにこの後、サスケは任務が入っていた。だが、いつもならこんな事など欠片も言わないのだ。 あさひは不思議に思って理由を問う。 「それはもちろんいいけど…、どうしたの？ 突然？」 「嫌な予感がするんだ。こんな時のは外れたためしはない。だから、任務を他の奴に代えるよう火影を脅したんだが……無理だったんでな。ったく、あのクソジジイ」 忌々しそうに言うサスケに、あさひは顔色悪く乾いた笑いを浮かべた。 だから玄関の方から帰ってきたのか…何て悠長な感想は一瞬にして消え去る。もの凄く恐ろしく、不遜な事を聞いてしまった。 だが、あさひはすぐさま脳内からその言葉を消し去った。 「わかった。父さんも気をつけて行って来てよ」 「頼んだぞ」 力強く頷くあさひに多少安心しつつ、サスケはまさに後ろ髪を引かれる様な思いで任務へと出かけていった。 それと入れ替わるように、はたけ家の次男・カジキの所へ遊びに行っていたあかねが帰ってきた。 もちろん、ナルトの事を言わない訳には行かないので、寝室へさらわれていったナルトの元へと二人して向かう。 最初、あかねは見慣れない少女に首を傾げていたが、先程と同じ説明に驚くどころか喜んだ。おそらく、歳の近い姉が出来たようで嬉しかったのだろう。 「おかあさん、遊ぼ！」 「いいってばよ！」 ナルトは笑顔で突進してくるあかねを抱き止めると、その場に二人してころころと転がる。 その様子は可愛い女の子二人がじゃれあうようで微笑ましかったが、あさひにはそれ以上に不安を感じた。 「母さん…。やけに、子供らしすぎるよ…？」 薬で子供の姿になっているだけにしては、行動が何となく幼い。 あさひはサスケの嫌な予感が的中し始めているのを、まざまざと見せ付けられているような気がした。 |
続きですいません。とりあえず、アップしておこうかと思いまして。
あかねはどこへ行った〜！ と言うツッコミを受ける前に先に言っておこう！
カジキん家へ行っております。一緒に遊んでいます。深く考えないで〜。(懇願)