ナルト大暴走・2 翌日。アカデミーへ行くあさひとあかねをナルトは陽気に送り出してくれた。 ナルトとあかねはご機嫌だったが、あさひは不安でいっぱいだった。 そんな時はもちろん、良い方にはいかないもので…。 授業はつつがなく進んでいき、今日は何事も起こらないだろうと安心したお昼過ぎ。 突然、ナルトがアカデミーに現れた。 「あさひっ！」 「ぐはっ！ か、かあさっ…！」 呼ばれて振り向いた途端、その姿を認めてあさひは叫びそうになった。とっさに両手で己の口を押さえる。 「何しに来たんだよ！」 小声で問えば、 「暇だったから遊びに来たってばよ」 にっこりと事も無げに言われた。まるでいたずらが成功したかのように、楽しそうだ。 しかも、困った事にナルトを目ざとく見つけたクラスメイトが寄ってくる。 「あさひ！ 誰だよ、その子！ めちゃくちゃカワイイじゃんか！」 「え…」 かわいいのは認めるが、あさひは答える言葉に詰まった。まさか母親だとは言えない。 だが、あさひが黙っているのをいい事にナルトが勝手にしゃべりだす。 「アタシはナルコ。あさひの遠い親戚だってばよ！」 （ぎゃ〜っ！！） あさひは声にならない叫び声を上げた。次いで、一緒にいたギンカが追い討ちをかける。 「おい、あさひ！ こんなカワイイ子が親戚にいるなんて聞いてないぞ。紹介しろよ！」 ギンカの言葉にあさひは即座に胸倉をつかみ上げた。 「あほーっ！ お前は父さんに殺されたいのかーっ！！」 「へ！？」 必死の叫びにギンカは目が点になった。全く意味が分からず間抜けな声が出たが、あさひは真剣だ。 「何で俺がサスケさんに殺されんの？」 ガクガク揺さぶられながら問えば、 「実はな…」 いつの間にかクラスメイトに囲まれてちやほやされているナルトを見やりつつ、あさひは親友の命のために必死に説明をしだした。 全てを聞き終えたギンカの顔は少し青かった。 「そうか…。知らないとはいえ、俺は何て危険な事を……」 先程の己の発言を省みて、ギンカは体を震わせた。 ギンカはナルトに関する事についてのサスケの恐ろしさを熟知していた。子供相手なんて理屈は全く持って通じない。しかも、ギンカなどカカシの子だと言うだけでさらに分が悪い。 「あさひ。止めてくれてありがとうな。…でも、あれはどうするんだ？」 ナルトを中心とした輪を指さすが、 「う〜ん…。どうしようねぇ…？」 あさひは後のことは考えたくなかった。 それでも何とか時間は進んでいくもので、ナルトはそのままに、やっと帰りの時間となった。 とにかく早く家に帰りたい。 だが、げっそりと憔悴しきったあさひとは裏腹に、ナルトは元気よくあいさつを交わしている。 「じゃ〜ね〜！」 あさひはその姿を、恨みどころかそれを通り越した虚ろな目で見ると、ナルトの無邪気な声が返ってくる。 「あ〜、楽しかったってば。ん？ どうした？ あさひ？」 「誰のせいだよ…」 元凶に心配されても嬉しくなかった。 そして、当然のように次の日も同じ事が続く。 たった二日目にして、あさひは相当参っていた。真剣にサスケの帰りを願う。 「父さ〜ん。俺には無理だよ〜」 まだ帰らぬ父に嘆きつつ、あさひはナルトの暴走を止められるサスケを真剣に尊敬した。 「あさひ」 ふと、呼ぶ声がした。振り向くと、あさひによく似た人物が立っている。歳は少し上だろうか。 見覚えは無かったが、本能であさひはそれが変化をしたサスケだとわかった。 よほど参っていたのだろう。あさひは瞬時にサスケに泣きついた。 「父さ〜ん！ もう、俺には止められないよ〜」 珍しい我が子の様子にサスケは苦笑をもらした。 「ああ。よくがんばったな。どうやら、あいつは精神まで子供返りしているようだ。もう連れて帰るから安心しろ」 「うん」 その言葉に、あさひは素直に頷いた。 サスケはポンッとあさひの頭に軽く手をやると、ナルトのいる方へ向かった。 「え…ちょっと、誰あれ…！？」 「カッコイイ〜！」 サスケの登場に今度は女の子たちが色めき立った。 だが、当然の事ながらそれに構う事なく、まっすぐナルトに向かっていく。 騒ぐ声にナルトも振り向くと、小さく声を上げた。 「あ…っ！」 「えっ？」 ナルトの驚いた声に周りの男どもも振り向く。 その瞬間、その場からナルトが消えた。 現れたのはサスケの元。 「おかえりっ！ サスケ」 抱きついた瞬間、男女共から絶叫が上がった。 もちろん、あさひとギンカを除いて。 あさひは平和が戻ってきたと喜んでいたし、ギンカは愉しげだった。 だが、そんな周りの様子もサスケとナルトには関係なかった。 「ああ、ただいま。だが、あんまりあさひを振り回すんじゃない。憔悴しきっていたぞ」 サスケがしっかりと抱きとめつつ注意をこぼすと、 「ごめんってばよ。でも、うちで一人でいるのが嫌だったんだってばよ…」 ナルトがかわいくすねる。 「仕方がないな。じゃあ、帰るぞ」 「うんｖ」 ひととおりラブッぷりをぶちかましてから、サスケはナルトを横抱き――つまり、お姫様抱っこをした。 そして、あさひに声をかける。 「じゃあ、連れて行くからな」 「うん！」 周りの嘆きなど耳に入らず、あさひは盛大な笑顔で二人を送り出した。 サスケとナルトが消えると、あさひとその隣にいたギンカは瞬時にみんなに囲まれた。 「あさひ！ どうなってるんだよ！」 「あの人誰？」 「二人はどういう関係なんだよ！」 次々と質問が繰り出されるが、ナルトからやっと解放されたあさひは浮かれすぎてちょっと壊れていた。 「旦那さんが迎えに来たんだ〜」 明らかにおかしい答えに、一同いっせいに目が点になった。 それで、これ以上あさひに聞くのは無駄だと思ったのだろう。今度はギンカへと向き直る。 口には出さなくとも、目が語っていた。 『親友なら何か知っているだろう！』 思わず苦笑がもれたが、あまり詳しいことも言えないので一言だけ。 「まあ、間違ってはいないよ？」 ギンカの言葉に、みんなは色んな想像をして真っ白になった。 この後は、ギンカを除く全員の落胆ぶりと、一人の浮かれ気味に授業にならなかった。 そして、数日後。やっとナルトは元に戻ったという。 |
あさひくん、お疲れ様でした。頑張ったね〜。よよ、落涙。
って、本当に本当の元凶に言われても嬉しくないか。(笑)
しかし、ファミリーって絶対誰かが暴走する…。
ま、そこが書いていて面白いんですが。やっぱナルト最強〜。